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老いを学ぶ

2012年09月05日

老いの工学研究所提供

福祉先進国・北欧視察④「自分で選択し、決定する高齢者たち」

老いの工学研究所

スウエーデンの「自己選択・自己責任」を私が最も感じたのは、一人の女性のご自宅を訪問した時のことです。彼女は74歳ですが、30年前に多発性硬化症という慢性疾患を発症しました。現在、普通の賃貸住宅で一人暮らしをされていますが、2本の指しか動かすことしかできません。

彼女は高齢者住宅への入居を勧められましたが、生活がしやすい状態に賃貸住宅を改修し(もちろん、オーナーの許可はとられています)、一人で自宅に住み続ける選択をしています。彼女の生活を支えているのは、ヘルパーではなくパーソナルアシスタントと呼ばれるスタッフです。彼女は、国から補助金を受けて個人でパーソナルアシスタントを雇っています。

雇用の時の面談は彼女自身が行い、現在は7名のパーソナルアシスタントが10時間/日の介護サービスを提供しています。また、彼女が一人の場合は、「安心アラーム」を利用し、必要なサービスを受けています。

    左から、エントランス、キッチン、寝室。

彼女は、多発性硬化症を発症した時に施行されていた障がい者(65歳以下の障がい者)に対するLSS(※)という法律の適用を受けています。74歳の彼女は、本来は高齢者の福祉サービスを受ける年齢となっていますが、専門チームによる長時間のケアサービスを受ける場合は障がい者向けの制度の方が手厚いことから、引き続きLSSの制度を利用しています。(但し、現在の法律では利用できなくなっていますので、彼女のような状態の方が同じようなサービスを受けることはできません。)

「このような状態での一人暮らしに不安はないのだろうか?」

これは彼女の自宅を訪問したみんなの疑問でした。この問いかけに対し、「もちろん不安などない。パーソナルアシスタントもいる、私にできないことはアシスタントがしてくれる。ここには私自身の生活がある。この生活を捨てて高齢者住宅に行くことなど考えられない」というのが彼女の答えでした。

私が訪問した施設長の方々は、入居者個人の生活を最大限に尊重するという考え方が基本であるという説明をされていました。それでもやはり施設に入るより自分の住み慣れた自宅で可能な限り生活をするという選択をする方がいるということに、まず驚きました。

そして、スウエーデンという国は彼女のような障がい者の方が、パーソナルアシスタントのケアサービスを利用しながら、たった一人で賃貸住宅に暮らしていける安心と保障をしている国であるという認識を持ちました。
また、今までの紀行で何度も触れていますが、ここでも自ら人生の選択し、自分の人生に責任をもっている高齢者に出会ったということです。私が高齢者となっていく過程で、自らの選択とその選択をするだけの自信と責任を持つことができるのかを考えた時間でした。

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