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老いを学ぶ

2012年07月11日

老いの工学研究所提供

福祉先進国・北欧視察②「フレンドリーな高齢者たち」

老いの工学研究所

ヴェーガハウスという24時間ケア付高齢者住宅を訪問し、このハウスのユニット長であるウェイオットさんにユニットの説明を受けた後、棟内の見学となりました。
棟内見学の時には、もちろんヴェーガハウスの入居者の方々も共用スペースにいらっしゃいます。私達を見ると入居者の方は「あのグループは誰?」と職員の方に聞き、説明を受けた後、私達ににっこり微笑み握手を求めます。日本であれば、そのような時気付かないフリをして通りすぎることも多いのでしょうが、彼らは私達に興味津々です。スウェーデン語で機関銃のように私に向かって話始めます。英語もままならない私がスウェーデン語で話す彼の質問の内容がわかる訳もなく、ただにっこり微笑むしかなかったのでした。(もしかしたら「微笑む」ではなく、引きつっていただけかもしれません)

その時、見学の時にお世話になった方や入居者の方に「お礼」という意味でプレゼントを持参していることを思い出し、早速彼に手渡しました。日本であれば、見ず知らずの外国人からプレゼントを差し出された場合、まず丁重に断る、のが普通なのでしょう。
ですが、彼はちょっとびっくりした顔をしましたが、プレゼントを受け取りながら、うれしそうに「サンキュー」の言葉を私に返してくれました。私の前でそのプレゼントを開き(それは朝顔の絵が描かれた手ぬぐいです)、隣にいた女性の入居者に見せていました。もちろん私はすぐに彼女にもプレゼントを渡しましたが、その時も彼女は「サンキュー」と言って私をハグしてくれました。

そして私以外の見学者との間でも同じような光景が、行く先々の共用スペースで見られました。棟内見学の間、にっこりと私達に向かい微笑む入居者の方が多いこと、そしてこれは、後日訪問する認知症の施設の入居者の方も同じでした。私が今回の北欧視察で会った何十人かの高齢者は、フレンドリーで、明るくて、毎日を楽しく過ごしているように見える方々でした。

私の祖母は認知症で老人ホームに10年暮らし、2年前に亡くなりました。その老人ホームには、認知症の方だけでなく、一人暮らしが不安な高齢者の方も入居されていました。帰省の度に、祖母に会いに老人ホームを訪れていた時、今回のような経験は一度もありませんでした。入居されていた方の中には、私を子どものころからよく知っている方もいたのですが・・・。

この違いはどこから来るものなのでしょうか。もちろん国民性の違いはあると思います。しかし、私は、北欧視察の間よく耳にした「自己選択・自己決定」ということが違いの一つの要因であるように感じます。

スウェーデンでは、たとえ認知症の方であっても最終の施設への入居という選択は本人に委ねられるということでした。日本の場合、施設への入居という選択が必ずしも本人の選択・決定によるものだけではありません。各家庭の状況により本人が希望しない場合であっても、家族の選択・決定により入居されている方もいらっしゃると思います。「認知症の方であっても施設への入居は本人の選択に委ねる」というスウェーデンの考え方は極論のようにも感じましたが、自分が選択・決定したことへの自信。この自信が日本の高齢者と違うのではないのだろうか。

そして、この日から「福祉先進国って!」という私の当初の疑問は、「なぜこんなにも高齢者が楽しく過ごしているように私には見えるのか?」というものに変わりました。
会いに行くたびに見ていた認知症の祖母の様子が亡くなってしまった今も忘れることが出来ない私には、北欧視察の間その疑問が頭から離れることはなくなりました。
上の写真は、3日目に訪問した「エングゴードバッケン」というハウスの様子です。入居者の方は服装も明るく、アルコールが大好きな方はもちろん昼食時でもビールを飲んでいます。喫煙する方は当然住戸内では禁煙ですが、屋外であれば喫煙されています。

次回は、このエングゴードバッケンでの実習についての報告です。

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