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老いを学ぶ

2012年06月26日

老いの工学研究所提供

福祉先進国・北欧視察①「歩きづらい街」

老いの工学研究所

2012年5月27日~6月4日までの9日間、「スウェーデン・デンマークの高齢者福祉を体験する!」という北欧視察に行ってきました。20年ぶりの海外、飛行時間12時間しかも福祉先進国であるスウェーデン、デンマークとなれば、多少の予備知識も必要と思い視察企画会社から推薦されていた両国に関する本を購入しました。(「地球の歩き方」は購入し忘れましたが・・・)旅行前にぎりぎり読み終え、どのような国であるかのぼんやりとしたイメージだけ持ち、そしてなにやら根拠もないまま「先進的な高齢者福祉を見ることができる!!!」と思い込み出発することとなりました。

最初に訪問したのは、スウェーデンのヨーテボリ市。ヨーテボリ市はスウェーデン第2の都市で人口52万人、昔から港町として栄えた街です。街の中には運河が流れ、その運河沿いには18世紀の大商人の住宅であった石造りの建物が並んでいます。写真で見た通り美しく歴史を感じさせる街並み、そして石畳の歩道。でも日本のアスファルトの道に慣らされている私の足に、実はこの石畳の歩道はすごく歩きづらいものでした。確かに初めて訪れた街なので道もわからず、右側通行にも慣れていないことはあるのでしょうが、それを差し引いても歩きづらいのです。健常者の私がこんなに歩きにくいなら、高齢者や障碍者の方はもっと歩きづらいのではないか?そして日本で必ず目にする歩道の点字ブロックがない!(この点字ブロックについては、通訳の方から、冬に雪が積もることと点字ブロックは逆に障害となるという考え方がある為、建物の壁面に点字ブロックと同じ意味合いの印がある、ということを後日教えていただきました)
そして当然のことですが、街のあらゆるところに段差もあります。到着して早々、心の中に「これって?」と思ったきっかけでした。

翌日、今回の視察「高齢者福祉を体験する!」の通り、ヨーテボリ市から民間委託されている「3つの財団」が運営しているヴェーガハウスという24時間ケア付高齢者住宅を訪問しました。この高齢者住宅には、中庭を取り囲むようにA:B:Cという三つのハウスがあり、Aハウスには慢性疾患・病弱で医療的な処方が必要な人、Bハウスには高齢者および若年(18~64歳)の障碍を持つ人、Cハウスには重度の認知症の症状の人が入居されています。

スウェーデンの高齢者住宅に入居する場合、入居者はコミューン(日本の「市」に当ります)と部屋の賃貸借契約を結び、家賃、共用スペース料、食費、ケア料金をコミューンに支払います。但し、高齢者・障碍者の最低限の生活を保障するため、最低保証制度が設けられているためコミューンへの支払い額は、入居者の収入や年金により異なっています。老後の生活で生活費の心配をすることなく、コミューン等の行政が面倒を見てくれる安心感。この老後の安心感こそがスウェーデンが福祉国家と言われている理由のひとつなのでしょう。

また、入居者は全員腕時計型の「安心アラーム」を携帯しており、部屋には緊急通報サービスが設置されています。ちなみ入居者の中には、一人でいることに不安となり数分おきに「安心アラーム」を使用する人もいるということでした。また、この「安心アラーム」は自宅で暮らしている高齢者方にも必要と判断されれば支給されます。日本にもこのようなアラームの制度は施設により取り入れているところもあると思いますが、行政として取り組んでいるというところはないのではないでしょうか。昨日の「これって?」思ったことは心の片隅に追いやられ、「なるほど、なるほど!」と説明を聞きながら思い、ようやく共用スペースと部屋の見学となりました。

次回は、このヴェーガハウス見学についての報告です。

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